とりいさえこ

「古典基礎語辞典」によると「恋」とは、やまとことばにおいては、離れていて心を寄せている相手にひかれ、しきりに会いたいという切なる心持ちがつのることを表すといいます。特に時間的、空間的に離れている相手に身も心も強くひかれる気持ちを表し、時には比喩的に、対象が動植物や場所になることもあります。また、「恋ふ」というのは身も心も惹かれ逢いたい気持ちが募る、という意なのですが、この思いは相手に働きかける“主体的”なものではなく、相手によって惹きつけられる“受動的”なものであると、古の人たちは捉えていたそうです。なんとも奥ゆかしく、「恋」というやまとことば自体に恋してしまいそうです。